ここ信州伊那でも弥生の月になると,あちこちで春の訪れを感じる。その中でも特に「花」に心惹かれる。それはたぶん,冬にはない鮮やかな色が目に飛び込んでくるからだろう。
まず,雪解けと共に顔を出すザゼンソウ。不思議な赤い色の法衣に包まれて,僧侶が座禅している様のようなのでこの名がついたのだと思う。名前の由来を調べたことはないが,調べるまでもなくそれを見て名前を聞けば誰でもピンとくるだろう。赤い法衣を開くところに,気温が上がってきているのだな,と冬の終わりを感じさせられる。
つぎは福寿草(フクジュソウ)。この花は早春のまだ雪が残るくらいの時に花ひらく。枯れた色の地面に黄金色が鮮やかで、心の中が急に明るくなって春めくので、好きな花。「福寿草」という名前もおめでたくて,新春にピッタリだ。
そしてマンサクの花。里山がまだ目を覚さぬうちに,この花だけがいち早く春を告げる。新緑よりも先に,葉が枯れ落ちた枝しかない木々の中に,黄金色がまさに光り輝いているように見える。
さらにダンコウバイ。これも木々の新緑に先立って,枯れた色の山に鮮やかな黄色い花がその稀有な存在を現してくれる。
里を歩いていてこれらの花を目にすると,「わあ,春」を感じて気持ちが明るく軽やかになる。
そしてこれらの花に続いて,色とりどりの芽吹きがやってくる。その姿は「山笑う」。きれいで的を射た表現だな。