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  令和二年の心理学的考察
Rakza MAGAZINE

令和二年の心理学的考察

2020.12.30
DIARY
浜田 正幸

ちょっと堅いタイトルですが,心の中を心理学的に振り返ってみましょうというものです。

 

新型コロナウイルスが日本でも脅威と認知されはじめたのが,あのクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」からでしょうか? 今年の1月のことでした。そして2月になるといよいよ市中に新型コロナが広がり,仕事をはじめいろんなことが延期になったり中止になったりしました。3月は感染がさらに広がり,4月にはあの緊急事態宣言が出されました。これによってそれまでの普段の当たり前の生活が一変してしまいました。仕事に行けず在宅勤務,学校も入学式は中止のうえ臨時休校かオンライン授業,電車にも乗れない,買い物も極力避ける,外食もできない,人に会わない。隣駅の繁華街まで歩いて行ってみましたが,これまでみたことのない風景。駅ビルも丸井も閉まっている。商店もシャッターを閉め,普段ごった返す通りもほんの数人のみ。

 

おそらく,この初めて見るこれまでとは全く違う風景が,不安や恐怖心を増大させたと思います。普段当たり前のはずが当たり前でなくなった未知の世界にいて,どう過ごせばいいのか,もっと心の深いところでは,どう生きて行けばいいのか,という漠然としたしかし心の中のシェアとしては巨大に不安が膨れ上がったことと思います。

 

そしてそれよりも大きな問題は「人と会わない」「人との交流がない」ことです。人の幸福は「多様で良好な人間関係」によるところが大きいことがわかっています。その人間関係が無くなるか,もしくはかなり抑制させられたわけです。人が人としての活動ができるエネルギー源は,食物ももちろん重要ですが,おそらくそれ以上に「人との交流」だろうと思います。人と交流するから,笑ったり,泣いたり,オシャレをして出かけたり,見た目を気にして身だしなみを整えたり,多様な人間らしい行動をしようとするエネルギーが湧いてくるのだと思います。鬼滅の刃に惹きつけられるのも,そんな人間同士の交流や炭治郎のやさしさを,私たちが無意識に求めているからなのかもしれません。

 

ところで,日本の自殺者数は,5カ月連続で前年を上回っています。職を失ったり,店を閉じたりしたことによる経済的な原因ももちろんありますが,心理的な要因も大きいと思います。私もこのような状況で,昨年の今頃と比較すると圧倒的に人に会わなくなっています。忘年会はもちろんありませんし,仕事の納会や締めもありません。関係者にご挨拶に回ることもありません。仕事関係の連絡は,メールか良くてもZoom。友人とはSNSで繋がっているのみ。なんだか元気が出ません。普段なら全身に湧いてくるエネルギーレベルが下がっていることを実感します。私は,そのことを今メタ認知していて内省することができています。だからその対処もたぶんある程度できていると思いますが,その心的エネルギーの欠乏状態(意識)にとらわれてしまっている人にとっては,「自分ではもうどうしようもない」「もうどうでもいい」と思いはじめることでしょう。そしてその意識の中にいる限り,その呪縛から逃れることができないばかりか,その考え(意識)がますます心の中のシェアを大きく占めるようになってしまいます。非常に危険な意識状態です。身体の異常は熱が出たり,血圧が上下したり,息苦しくなったりして,本人も自覚できるし,他人が見てもすぐに異常に気づきますが,心の異常は本人にも他人にもわかりにくいものです。

 

この呪縛を解き誰もができることのひとつとして,真の意味での「ヨーガ(心身統一・調和)」をお勧めしたいと思います。体操でも運動でもポーズでもない,「真のヨーガ」を。

そういえば鬼滅の刃でも,ヨーガで重視される「呼吸法」が重要でしたよね。

浜田 正幸
Masayuki Hamada
研究担当教授の浜田正幸です。 日本の『働く』をおもしろくする! 幸福なキャリア研究をお届けします。
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