Now Loading...

  日々一献#15
Rakza MAGAZINE

日々一献#15

2020.12.07
DIARY
野田 稔

#15 走るBAR

「新幹線 水割りあれば 走るBAR」 どこかの新幹線のホームで見かけた川柳だ。 僕の知る限り、これほど上手く新幹線を表したコピーはない。

少なくとも僕にとっては。 新幹線で呑むのが好きだ。 他の列車よりも、新幹線で呑むの好きだ。とりわけ、グリーン車で呑むのは格別である。もっと絞り込むと、帰りの新幹線のグリーン車で呑むのがいい。 もっともっと絞り込むと、京都からのグリーン車上りで呑むのが最高に好きだ。

これにはちゃんとしたわけがある。 まず、往きの新幹線は多くの場合早朝である。着いたらすぐに仕事だ。私事の場合もそのあと何か予定がある。呑めない。 帰りの場合は大体夕方以降だ。昼間だとしても一仕事終わった解放感がある。 グリーン車は言うまでもないが、座席が快適だ。しかも普通の列車よりも揺れが少ない。新幹線特有の揺れは、一杯呑むのにはむしろ合っているように思う。 京都発はつまみや弁当の調達に好適だ。だし巻きや鯖寿司、おばんざいを買い込んで一杯やるのは最高だ。 名古屋で矢場とんビールの組み合わせも捨て難いが、いかんせん名古屋東京1時間半は少々忙しない。 新大阪でたこ焼きかお好み焼き、551蓬莱でシウマイか餃子を仕込む手もあるが、京都のおつまみには敵わない。やはり、帰りの新幹線京都からグリーン車が一番だ。

この日曜日、父の戒名のお礼に京都の菩提寺を訪ねた。お寺さんはとても好きな場所で、いい思い出とともにとても懐かしい場所だ。しかし、今回の訪問はいささか普段と異なる。今までは父がいたので、難しいお作法も時宜に叶ったお礼もお任せでよかった。ところが今回は僕がその矢面に立つことになる。大変緊張した。 結局大きな忘れ物もしたのだが、それ以外は大過なく終わり、ほっとして京都駅まで帰ってきて、昼食を摂っていないことに気付いた。

さて、何を食べようか。帰りの列車の時間も近づいていたので、久し振りに駅弁にすることにした。 京都の帰りに軽く食べるとしたら、やはりあれだ。そう、季節的にもあれがいい。 鯖寿司。 それも「いづう」の鯖寿司にとどめを刺す。 駅のコンコースをしばらく探し回り、やっと見つけたのが、一人前六切れ最後の一包み、2430円。昼ごはんとしては少々贅沢だが、まあ、今日は特別な日だから、と言い訳しながら買い求めた。 鯖寿司を食べるのにお茶は合わない、口の中が生臭くなる、と、これも言い訳しながら日本酒を探す。迷いに迷って、玉の光の大吟醸。満足のいく品揃え。

楽しい帰路になりそうだ。

野田 稔
Minoru Noda
座右の銘は夢は近付くにつれ目標に変る(イチローの言葉) 座長の野田稔です。 気付いたら大学で教え始めて20年!実務家と教員の2足のわらじも板についてきました。 今年はもう少し楽しみながら過ごしたいと思います。
この記事を書いた人

CONTACT

あらゆるお問い合わせは、
下記フォームからお気軽にどうぞ
PAGE UP