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  日々一献#13
Rakza MAGAZINE

日々一献#13

2020.11.10
DIARY
野田 稔

#13酒の温度 その2

前回は極低温の酒の話をしたので、今回は少し温度を上げてみたい。 室温、常温とは何かである。 酒飲みに暑がりが多いのかどうかはわからないが、冬でも「冷やで」とオーダーする例は多いと思う。

かく言う野田も、冷やで、と言うことが多い。 では、日本酒の「冷や」とは何度ぐらいのことを言うのだろうか。 調べてみたら、日本酒の冷やとは「常温」とのことだった。日本酒は燗酒がデフォルトということなのだろう。

では常温とは? 常温を「室温」と捉えると、夏なら暑ければ30度近くになろうし、冬なら20度を下回ろう。 確か、冬の省エネ目標である室温は18度だったはずだ。 正解は、まさに省エネ目標の18度だ。日本酒の常温は意外と低いと言うことになる。 夏なら、かなりひんやりと感じるはずだ。 それ以下の温度の日本酒は「冷酒」と呼ぶ。粋な名前もついていて、「涼冷え」が15度、「花冷え」が10度、「雪冷え」が5度だそうだ。

真夏に「日本酒。雪冷えで」と言ったら、それだけで涼しくなる気がする ちなみに上の温度では、手温まり陽溜りの「日向燗」が30度、よく言う「人肌燗」が35度、僕の好きな「ぬる燗」が40度、普通に飲める温度の上限の「上燗」45度、口をつけると最初はむせる「熱燗」50度、真冬にはありがたい「とびきり燗」55度となっている。

冷たい方も温かい方も、5度刻みで細かく名前が変わるところが、日本人らしい繊細さだと思う。 さて、日本酒以外はどうだろうか。 「常温」の酒として思い浮かぶのはワインだろう。一般常識として赤ワインは常温とされている。 さあ、この場合の常温とは日本酒と同じく18度だろうか。 調べてみたら、わずかに低い14度が適温であることがわかった。

酒はそれが作られた場所の風土と密接に関わる。 ワインが作られ、飲まれているヨーロッパは、日本に比べて気温が低いところが多い。それゆえ、常温も低くなるのだろう。ワイン発祥の地とされるジョージア(昔はグルジアと言っていましたね)、アルメニア、アゼルバジャンあたりの気温も大体中央ヨーロッパと同じである(年間平均気温で見てフランス10度、ジョージア13度、東京17度)。 常温と言われているからと言って、日本の室温で飲んでしまうと少し暖かすぎるのだ。 ちなみに白ワインは6〜9度が適温というから、日本酒で言えば雪冷え以上花冷え未満という感じだ。 スパークリングはさらに下で、5度程度が適温とされる。 酒に温度が大切であることはみんなわかっていても、ついつい面倒くさくていい加減な温度で飲んでしまうことも多いだろう。

これから燗酒が美味しくなる季節だ。 これを契機に、温度に拘った酒を楽しんでみるのはいかがだろうか。

酒の神ディオニュソス(ローマ神話ではバッカス)

野田 稔
Minoru Noda
座右の銘は夢は近付くにつれ目標に変る(イチローの言葉) 座長の野田稔です。 気付いたら大学で教え始めて20年!実務家と教員の2足のわらじも板についてきました。 今年はもう少し楽しみながら過ごしたいと思います。
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