加藤剛が生まれたのは静岡の御前崎、家は古くからの地主で、父親は小学校の校長だった。
東京にいた姉の家に寄宿し、早稲田大学第二文学部演劇科に入学、学内の「自由舞台」という劇団で活躍した。
大学4年の時に、俳優座養成所に入り大学を休学してテレビドラマ「人間の条件」に出演した。
以降、人気俳優として多くのテレビドラマ、映画、舞台で活躍する。
テレビでは、「三匹の侍」や「大岡越前」で彼をみた人が多いだろう。
僕にとっての加藤剛のはまり役は、「砂の器」(1974)の和賀英良役。癩病の父とともに差別され、やがて育ての父を得て立派に成長するも、その父親を殺してしまう。運命に翻弄される音楽家の役は秀逸だった。自作の曲でピアノを弾き、タクトを振るう姿に重なる幼い時のシーンが、主人公の悲しみと苦しみを見事に表した。
そしてもう一本、「舟を編む」(2013)の松本朋佑役。辞書を監修する国語学者の役を淡々と演じた。物静かな学者でありながら、積極的に若者を取材し、俗語や流行語を集めるその姿は、酒もタバコもやらず、芝居一筋の真面目な加藤剛本人そのもののようにも見えた。
2018年6月18日、胆嚢癌のため死去。80歳だった。