今日の言葉
「世の中をよそに見つつもうもれ木の埋もれておらむ心なき身は」
大老として有名な井伊掃部頭直弼(いいかもんのかみなおすけ)の言葉。
父・井伊直中の14男、庶子として生まれた直弼は、長く部屋住みとして過ごし、自らを「埋もれ木」と称していた。
しかし、彦根藩主後継者の死去により、近江彦根藩の第十五代藩主となる。
将軍家定によって大老に任ぜられた直弼は、日米修好通商条約締結や将軍後継問題の中心的人物となり、一橋派に敵対する立場となり、安政の大獄を断行することになる。
このことは尊王攘夷派の強い反感を買うことになり、万延元年3月3日朝、雪の中で井伊直弼を載せた駕籠は水戸藩脱藩浪士を中心とする浪士の襲撃を受け、44歳の若さで命を絶たれた。これが桜田門外の変である。
井伊直弼は名君だとする説や低い評価も混在するが、国学を修めた他、兵学、居合、槍術などに優れ、また茶の湯、和歌、能楽もよくする能力の高い人であったことは間違いない。
浅田次郎原作の映画「柘榴坂の仇討」(若松節朗監督)には、名君として描かれており、井伊直弼を演じた中村吉右衛門は実にすばらしい存在感を見せた名演技であった。直弼の近習・志村金吾(中井貴一)は直弼を「ちゃかぽん」と呼ばれたとしており、それは茶の湯、和歌、鼓を嗜んだ風流人という意味で言っている。
今から百六十数年前の出来事であった。






