1964年10月10日、第18回オリンピック競技大会がアジアで初めて、東京で開催された。その開会式の日。
今になって思い返すと、東洋の魔女の金メダルや三宅兄弟の重量挙げと体操や柔道の活躍、チャフラフスカの美しい姿、アベベの2大会連続のマラソン制覇、そんな競技の記憶よりも当時の世界や日本の日常生活のことが思い出される。
市川崑監督の公式記録映画「東京オリンピック」によると、開会式のシーンではもう今はない国の姿も多く見られる。特にUSA(アメリカ)とUSSR(ソヴィエト)が続いて入場して来ることには感動を覚える。
そして、日本人選手団や観客の顔、服装、佇まいにも大きな違いを感じる。
昭和天皇と皇后が開会式に参加しているし、観客席にはO Nの姿もあった。東京の街には都電が走り、バスもまだボンネットバスだった。
陸上競技のスタートは、「位置について、よーい、(号砲)」と日本語であったことや、自転車競技の八王子が田園風景であったことも今となっては驚きでしかない。選手が身につけているウエアも、今となっては大時代的なものを感じてしまう。
2021年に1年遅れで開催された東京オリンピックでは、河瀬直美監督が「東京2020オリンピックSIDE:A/B」という映画が作られた。
残念ながら観ていないのだが、オリンピックの誘致からエンブレムや国立競技場の建設にまつわるゴタゴタ、さらに今も続いているスポンサー決定の贈収賄事件など、かつての夢と希望の象徴だった1964のオリンピックと比較して、随分と汚れてしまったことが残念でならない。