野茂英雄がメジャーリーグ(ロサンゼルス・ドジャーズ)で2年目を迎えた、1996年9月17日のロッキーズ戦で、アジア人初のノーヒットノーランを達成した。
よくよくこの試合を見てみると、野茂の記録はさらに輝きを増す。
まずはこのゲームがロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドで行われていること。このスタジアムは標高1マイルの地にあり、高地であるがために球が飛びやすく「打者天国」と言われていること。
さらにこの日は、雨のために試合開始が2時間以上遅れ、試合開始の気温は5℃程度の寒さの中の試合だったことだ。
足場の悪いマウンドに立つ、野茂の立ち上がりは不安定で、1回2回ともに四球の走者を出し、しかも盗塁を奪われてしまう形だった。
すると驚いたことに、野茂は3回からトルネードを封印し、セットポジションで投げ始める。女房役の捕手、マイク・ピアッツァによると、セットポジションは制球力を高め、盗塁を許さず試合展開を早めるためだと言っている。いわゆる「守備でリズムを作り、攻撃に活かす」という作戦である。
ドジャーズは得点を重ねていくが、結果論ながら微妙なプレーが4回裏にある。この回も野茂は、先頭のバークスに四球を与えてしまう。1アウト後、ガララーが打った初球は、ショートの左へ。ショートを守るギャグニーは横っ飛びでボールを取るが転倒していて、辛うじてセカンドでフォースアウト。もしもランナーがいなければファーストまで投げなければならず、おそらく内野安打となっていた。
結局、9−0でドジャーズは圧勝、野茂は110球で無安打完封、アジア人初のメジャーリーグノーヒッターとなった。
メジャーリーグでは、今までに325回のノーヒッターが達成されているが、この球場での達成は野茂だけである。
5年後に野茂は再びノーヒッターとなるが、それはまた別の話。