日本の国民的映画「男はつらいよ」は、1969年8月27日に公開された。
前年秋から半年間、フジテレビでドラマ版の「男はつらいよ」が放送されていたが、「ハブに噛まれて寅さんが死ぬ」という最終回に抗議が殺到し、その罪滅ぼしの意味も含めて松竹が映画を製作したという。
第1作の観客動員は54万3000人と微妙な成績だったが、安定したシリーズ映画を求めていた松竹は早々に続編の製作を決めた。そしてそれが、48作までで延べ7957万3000人という空前の観客動員となった。
テキ屋稼業で日本の各地を渡り歩く車寅次郎が、異母妹さくらと叔父夫婦が住む葛飾柴又の団子屋に戻ってくるところから物語が始まり、そこに寅次郎が惚れるマドンナが登場する。
冠婚葬祭や、下町の生活の中で小さな事件が巻き起こり、マドンナは寅に次第に引かれるが、最後は必ず悲恋に終わる。
この偉大なパターンが、ずっと踏襲された「男はつらいよ」の人気の秘密だった。
そしてあの主題歌、星野哲郎作詞、山本直純作曲の「男はつらいよ」も国民的愛唱歌でもある。
「それを言っちゃあおしまいよ」
「結構毛だらけ猫灰だらけ」
「たいしたもんだよ蛙の小便、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし」
「四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水、粋な姉ちゃん立小便」
などの有名な決め台詞も生み出した「男はつらいよ」のフーテンの寅。
渥美清には、俳優としては長谷川一夫に次ぐ二人目としての国民栄誉賞が贈られた。亡くなって1か月後のことだった。