1980年4月25日、東京の銀座3丁目の路上で、トラック運転手の大貫久男さん(当時42歳)が風呂敷包みに入った現金1億円を拾った。
結局、落とし主は現れず、現金は大貫さんの手に渡った。
当時大学卒の初任給が、11万円程度だった時代であり、1億円という金額はとてつもない大金だった。
拾得物にも所得税がかかるため、大貫さんが手に入れたのは6600万円であったが、大貫さんは警備員を雇ったり、防弾チョッキを身につけるなど、大変な騒ぎとなった。
法的には拾われたものは拾得物であるが、占有者の意思によらずにその所持を離れたものは遺失物と呼び、遺失物法によって定められている。
遺失物法では、拾得者は速やかに拾得をした物件を遺失者に返還するか、警察署長に提出しなければならず、警察署長は遺失者を知ることができない場合は、物件の種類及び特徴、拾得日時、場所を公告することになっている。
そして、公告後3か月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得することになっているのだ。
ちなみに、2019年に警視庁の遺失物センターに届けられた拾得物は415万2190件で、最も多かったのは免許証やクレジットカードなどの「証明書類」であり77万4697件、続いてスイカやパスモなど「有価証券類」が55万7614点と続く。
現金の総額は38億8422万円余で、拾い主が受け取ったのは約5億4千万円というから、大貫さんの取得物が新聞を賑わしたのには頷ける。
だからといって、下を向いて歩いていては人生は拓けない。
上を向いて歩こう。