1991年11月24日、イギリスからひとつの訃報が届く。
クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリの死の知らせだった。
とてつもない衝撃と共に哀しみに包まれたクイーンファンは、しかし2018年11月9日に喜びを味わうことになる。
それが、映画「ボヘミアン・ラプソディ」の公開だった(日本公開)。
この映画の最大の見所は、やはりクライマックスでもあるライブエイドのシーンだろう。
これはもう、圧倒的な存在感。Queenの、フレディ・マーキュリーの、おそらく世界一、史上最高のライブパフォーマンスを再現してくれた。ライブエイドの映像は今も見ることができるが、おそらくできる限りと言って良いほど精緻にコピーされている。
音源はオリジナルだと思うが、ステージのセットはほぼ本物と見紛うばかりの正確な再現、ピアノの上に雑然と置かれたペプシやビールのプラカップまで同じ。
メンバーの衣装、立ち位置、フレディの動きも実に忠実だ。
「レディオ・ガガ」が終わった後のステージにひざまづくポーズは完璧だ!
カメラワークやカット割りに関しては、映画の方が優れている。なぜなら映像技術が進み、ピアノの下からブライアンまで移動するカメラワークなんかも使われているし、映画のストーリーを活かすためのインサートカットがふんだんに使われる。
ステージ袖で見つめるメアリーやジム、照明スタッフやミキサーの顔、自分のデスクでテレビを見ていると思われるEMI社長のレイ・フォスター、投げキスの直後に母親の顔を入れることももちろん忘れない。
そして何よりも、熱狂する聴衆と、その群衆を見て誇らしげに微笑んでいるように見える、ブライアン、ロジャー、ジョンの顔。
誰もが、生きていて良かったと言っているように見える。
誰もに、愛が溢れているように見える。
あのQueenが完璧に蘇った瞬間だった。