古代ケルト人にとって、10月31日は1年の終わりの日、そして冬の始まりであったらしい。
人々はこの日に死者の霊が訪ねてくると信じていて、身を守るために仮面を被り、魔除けのための焚き火を焚いていたという。まるで京都・八坂神社の「白朮参り(おけらまいり)」のようだ。
そこからカボチャをくり抜いて蝋燭を立てた「ジャック・オー・ランタン」が生まれ、子供たちが「Trick or treat(お菓子をくれないと悪戯するよ)」という言葉を唱えながら近くの家を訪ねる風習になった。
そしてそれが日本に伝わると、いつの間にか仮装した人たちが集まるイベントへと進化した。確かに「死者の霊」に連なるような仮装は多いようには見える。
いずれにせよ、特に日本では、今や宗教的な意味合いはあまりない。
僕がこの言葉を意識したのは、たぶん1979年にリリースされたユーミンの「OLIVE」というアルバム。
最後に収録された「りんごのにおいと風の国」という曲だった。
不思議なギターの旋律で始まるこの歌は、「ハロウィーン」という言葉で始まる。
「木枯らしのバスが夕暮れの街を過ぎれば うつむいた人々 どれもが似ている顔」と続く。
そしてサビは「もういけない たずねてゆけない わがままなあなたをゆるしそう」、なんと切ない詞だろう。
「いのこづち」という言葉を知ったのもこの歌からだった。「猪子槌」とも書くこの植物は、いわゆる「ひっつきむし」と呼ばれる衣類にくっつく植物の一種で、歌の主人公はこの植物を彼のセーターに投げる。セーターをぬいだ時に気づく「小さいブローチ」として・・・
「ハロウィン」も「りんごのにおいと風の国」も、切なくもの哀しい10月の終わりの日に直結している。