1946年5月23日、日本で初めてキスシーンが描かれた映画「はたちの青春」が封切られた。
戦後間もない当時は、映画もGHQの検閲を受けており、脚本を見たGHQの担当者が「キスシーン」を求めたという逸話が残っているが、ともかくこの映画は話題となり、大ヒットした。
佐々木康監督のこの映画は、このシーンばかりが取り沙汰されることになる。
主演の幾野道子は「お仕事だと割り切って、目をつむって夢中でした」と語り、また相手役の大坂志郎は「接吻とは消毒臭いものでした」と言った。
これは、このシーンでは二人の間にオキシドールを染み込ませた小さなガーゼを挟んでいたためだった。
「キス」という言葉には、なんとも言えない甘酸っぱい香りを感じる。
日本では、室町時代には「口吸い」という身も蓋もない言葉があったが、「口づけ」や「接吻」などと言葉を変えてきた経緯がある。
広辞苑で接吻をひくと「相手の唇・頬・手などに唇をつけ、愛情・尊敬を表すこと。くちづけ。くちすい。キス。」とある。
しかしどんな言葉より、「キス」という言葉の響きには敵わない気がする。