不思議な人だと思う。
役者だから当たり前かも知れないが、本当の樹木希林という人が長くわからなかった。
若い頃は文学座の座員で杉村春子の付け人もしていたというのに、とんでもない先端ファッションの写真も多く残っている。
そうかと思うと若い頃から老け役をこなし、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」や「ムー一族」ではコミカルな役柄や、歌や踊りもこなしていた。
そのため、「ピップエレキバン」や「フジカラー」などCMでも引っ張りだこだった。
私生活では、強烈な個性がある岸田森や永遠のロッカー・内田裕也と結婚して、知ったときには驚いたものだ。
しかし、「“樹木希林”を生きる」(NH Kのドキュメンタリー)を見ると、さばけた性格ながら演技には真面目で厳しさを持った人だとわかる。
病気に侵されながらも、多くの仕事を引き受けてマネージャーもなしで自らの運転で現場に入る強さと使命感を持っていた。
晩年の映画では、余人をもって替え難い役が多い。
「東京タワー〜オカンと僕と、時々、オトン〜」「歩いても歩いても」「わが母の記」「そして父になる」「あん」「海街diary」「万引き家族」どれをとってもそうだ。そして「日日是好日」、はまさしく樹木希林の映画だった。
多くの作品と記憶を我々に残し、2018年9月15日、自宅で家族に看取られながら亡くなった。
答え合わせのような言葉も残している。
「結婚なんてね、若い時にしとかなきゃダメなの。物事の分別がついたら、あんなことできないんだから」