2月6日は「抹茶の日」だという。
愛知県西尾市茶業新興協議会が制定した記念日だが、茶の湯の世界で釜を載せて湯を沸かす「風炉」の「ふ(2)ろ(6)」の語呂合わせというから、どうしようもないダジャレの記念日に比べれば、多少気が利いている感じがする。
現在の作法では、風炉は5月から10月まで使用される炉であるが、その佇まいはなかなかに風情がある。
抹茶は、もちろん緑茶の一種ではあるが、碾茶(てんちゃ)を粉末にしたものである。茶道の世界には「濃茶」と「薄茶」があり、濃茶はひとつの椀の濃茶を主客より順にまわして飲む。薄茶はひとりに一椀ずつ点てる。お菓子にも違いがあるが侘びの世界である。
僕の祖母は、よく自室で薄茶を点ててくれた。といってもただの六畳の和室でのことだが。
僕が小学生の頃から、浪人して京都にした最後の年までの間、祖母の部屋を訪ね「おうす」をいれてもらいいただく。その時に交わす言葉はそう多くないが、なんとも特別な時間のように感じたものだ。
現代人はなかなかお抹茶をいただく機会もないが、この日常を脱し、静かで豊かな時間のお点前を大切にしたいと思う。
自分でお抹茶を点ててみるのもいいのかもしれない。